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ひかりふる路 〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』が千秋楽を迎えてしまった。配役が発表になって、サン=ジュストを調べた日が懐かしい。


もともと私は朝美絢さんが好きで、雪組生として初の大劇場公演に少し緊張しながら自分の初日を迎えた。

尊敬の想いを湛える、美しい青年。サン=ジュスト素晴らしいハマり役で、とても嬉しかった。大好きなお役になりました。


冒頭、サン=ジュストの『国王であることこそが罪なのだ』という力強い歌い出しに驚いて。サン=ジュストの演説が持った力が伝わってくる。一気に物語に惹き込まれた。
そもそも、幕が開いて1番最初に歌い始めるのが朝美絢さんだった瞬間に驚いた。すごい。

そして、お芝居の細かさ。目線や表情でそのときの感情が見えるお芝居がとても好きで
すごかったのは、サン=ジュストのマクシムに対しての笑顔と、マクシムやその理想を否定するものに対しての冷たい瞳の差。マクシムへの笑顔はどんどん輝きを増して、マクシムの理想を阻むものへの瞳はどんどん鋭さを増す。

恐怖政治の場面だと、『探せ フランスの敵を』の目線は敵を強く見据えていて、『あのひとが 我ら導く』の目線は期待に満ちている。そしてひとりパートを外れて『あのひとが』と歌うところが本当に鳥肌だった…。(ところで『あなたが』と聞こえた日があった(ような気がしている)のは単に私の記憶違いなのか…)
この場面に至る少し前、『我々市民には まだ あなたがいる』とマクシムに駆け寄る瞳は揺るぎなくまっすぐ。このあとに銀橋で膝をついて讃えるのと、最後の議会で膝から崩れ落ちるのと、目線の先にいるのは同じマクシムなのに。

ダントンたちを処刑する場面では、『やれ!』という処刑の合図、そしてやってしまった/やったという表情からの満ち足りた笑顔、なのに『ダントンたちの処刑は滞りなく終了いたしました』と嬉々として報告したらマクシムの反応が薄くて、不安そうな表情になったりとか。

冒頭、ロベスピエールが『ひかりふる路』を歌いきったあとの『彼こそ 革命そのものだ!』というセリフは、暗転しながらで表情は見えないのに、この一言の響きでもサン=ジュストが嬉しそうなのが伝わってくる気がして大好きだった。

言い出したらきりがないけれど、全ての場面でサン=ジュストが生きていて。

冒頭のジャコバンクラブでマクシムを追いかける所作も、恐怖政治を止めようとマクシムに語るマリー=アンヌを見る瞳も、帰ってきたダントンに対する舌打ちも、最後の議会で不安そうなマクシムに声をかけている笑顔も、死を望んだマクシムを見つめる呆然とした表情も(そのあと膝から崩れ落ちるのも)、これ以外にも本当にたくさん、語り尽くせないほどに語りたい場面がある。

今回、朝美絢さんはこのサン=ジュストを演じる力のあるひとだと改めて見せつけられて、丁寧なお芝居も力強い歌も公演を重ねるごとに迫力が増すのが分かって。東京で開幕してから約1ヶ月半、サン=ジュストと共に生きることができて最高に楽しかったです。

ひかりふる路』は終わってしまったけれど、この作品に、サン=ジュストに、出会えてよかった。約3ヶ月の公演、本当にお疲れさまでした。
次はどんな朝美絢さんになっているのか、今から楽しみしかありません。